4月1日から「離婚後も共同親権」になった。何が変わって、何が変わらないのか

日本情報

4月1日の朝、ニュースで「共同親権が始まった」という話題を見た。気になって調べ始めたら、思っていたより複雑な話だったし、思っていたより多くの人に関係する話だった。

今月から変わったことを、できるだけわかりやすく整理する。離婚している人、これから離婚を考えている人、そして「とりあえずどんな制度なのか知りたい」という人に向けた内容だ。

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Photo by Rinto Sarkar on Unsplash

今まで:離婚したら必ず「単独親権」だった

日本では長い間、離婚すると父か母のどちらか一方だけが子どもの親権を持つ「単独親権」しか認められていなかった。

親権を持つ側が子どもの教育・医療・進路などすべてを決める権限を持ち、親権を持たない側は面会交流をするだけという形だった。世界の多くの国がすでに離婚後も両親が共同で子育ての決定に関わる「共同親権」を導入している中で、日本は例外的に単独親権だけという状態が続いていた。

この問題は長年議論されてきた。別居する親が「子どもの病院受診の決定にすら関与できない」「転校を知らされなかった」という声がある一方、「親権のない親が元配偶者の生活に干渉してくる」という懸念もあった。いずれにせよ、単独親権だけという制度の限界が指摘されてきたのは事実だ。ちなみに法改正の審議の過程では、反対署名が24万人を超えるほど社会的な関心と論争を巻き起こした。それだけ多くの人にとって身近で切実なテーマだということだ。

これから:共同親権か単独親権か選べるようになった

2026年4月1日施行の改正民法で、離婚後の親権のあり方が変わった。

離婚する際、話し合い(協議)で「共同親権にする」か「単独親権にする」かを決められるようになった。離婚届の書き方も変わり、双方を親権者として記載する選択肢が加わった。

ただし話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所が判断する。裁判所はDVや虐待の有無などを考慮したうえで、どちらの形が子どもの利益に合うかを決める。

日常のことは一人で決められる、重要なことは二人で

共同親権になった場合、すべてのことを毎回二人で決めなければいけないのかというと、そうではない。子どもの日常的な医療(風邪での受診など)、学校の授業、日常生活の判断は、同居している親が一人で決めることができる。

問題になるのは「重要事項」だ。転校、手術、進路の大きな決定などは原則として共同で決める必要がある。これが共同親権の難しいところで、関係が悪化した元夫婦が決定をめぐってもめるリスクが指摘されている。緊急の場合や、DVから逃げている場合は一人での決定が認められる。

DV被害者への配慮はどうなっているのか

この制度への最大の反対意見が「DV被害者が加害者と共同親権を強制される」という懸念だった。審議中には24万人を超える反対署名が集まった。

これへの法律上の答えは「DVや虐待がある場合、裁判所は必ず単独親権を選択する」というものだ。法文上は明確に保護の規定がある。

ただし現実的な懸念は残る。DVの認定には証拠や手続きが必要で、被害が認定されるまでの過程で当事者に負担がかかる。支援団体からは「制度の理念より実運用の問題を心配している」という声が出ている。

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「法定養育費 月2万円」とは何か

今回の改正で、もう一つ大きな変化がある。「法定養育費」の新設だ。

これまで養育費の支払いは、離婚時に夫婦間で取り決めなければ請求できなかった。取り決めをせずに離婚した場合、後から養育費を求めても応じてもらえないケースが多く、特にひとり親家庭の貧困問題につながっていた。

今回の改正で、協議なしに離婚した場合でも、子ども1人あたり月2万円の養育費を自動的に請求できる権利が生まれた。上限は子ども1人あたり月8万円だ。

さらに「先取特権」という仕組みが付与されたことで、養育費の債権が一般の借金より優先的に回収できるようになった。公正証書がなくても給与の差し押さえを申し立てやすくなるため、養育費の不払い問題への対策として機能することが期待されている。

月2万円では少なすぎる、という声

「月2万円は少なすぎる」という批判も当然ある。これは「最低限度の請求権」として設計されたものであり、別途協議で増額することは引き続き可能だ。法定養育費はあくまで「協議なしでも最低限これだけは取れる」という基準を設けたものとして理解するのが正確だ。

すでに離婚している人はどうなるのか

「自分はすでに離婚しているけど、共同親権になるのか?」という疑問は当然出てくる。答えはノーだ。今回の法改正以前に離婚して単独親権になっている場合、自動的に共同親権に変更されることはない。

共同親権への変更を望む場合は、家庭裁判所での調停・審判の手続きが必要になる。そして裁判所が子どもの利益に合わないと判断した場合は認められないこともある。

逆に「共同親権にしたくない」と思っている既離婚者については、今のところ何もしなければ現状(単独親権)が維持される。

離婚届の手続きが変わった

4月1日以降、新しい離婚届の様式が使われている。従来は親権者を一人だけ記載する欄があったが、改正後は父母双方を親権者として記載する選択肢が加わった。

「どちらを選ぶか」は離婚届を出す前に夫婦間で決める必要がある。決まらない場合は空欄のまま提出することはできず、家庭裁判所の手続きを経ることになる。離婚を考えている場合は、新しい離婚届の様式を事前に確認しておくことを勧める。

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離婚届の手続きが変わった

4月1日以降、新しい離婚届の様式が使われている。従来は親権者を一人だけ記載する欄があったが、改正後は父母双方を親権者として記載する選択肢が加わった。

「どちらを選ぶか」は離婚届を出す前に夫婦間で決める必要がある。決まらない場合は空欄のまま提出することはできず、家庭裁判所の手続きを経ることになる。離婚を考えている場合は、新しい離婚届の様式を事前に確認しておくことを勧める。

よくある疑問:Q&Aでまとめる

制度についてよく出る疑問をいくつかまとめておく。

「相手が共同親権を拒否したら?」という疑問には、協議が不成立の場合は家庭裁判所が判断するという答えになる。裁判所は子どもの利益を優先して単独か共同かを決める。相手が嫌がっているだけで自動的に単独親権になるわけではない。

「転校や手術は毎回合意が必要なのか?」という点は実務上の不安として大きい。原則として重要な決定は共同で行うが、緊急時や一方の親が連絡を取れない状況では単独での決定が認められる。実際の運用はケースバイケースになる部分が多く、弁護士や家庭裁判所の関与が想定される場面も出てくる。

「再婚したらどうなるか?」は複雑だ。再婚後の新しい配偶者と子どもの法的な関係(養子縁組の有無など)は別途考える必要がある。元配偶者との共同親権が続く中で再婚相手が関わる場合、親権の決定に関与できるのは親権者のみという整理になる。

共同親権の「賛否」をどう見るか

正直に言うと、この制度は一概に「いい」「悪い」と言える話じゃないと思う。

別居した父親や母親が子どもの人生に関与し続けられるという意味では、子どもにとって両方の親と関係を持てるメリットがある。養育費の取り決めがなかった家庭でも最低限の請求権が生まれたことは、ひとり親家庭の経済状況改善につながりうる。

一方、関係が壊れた夫婦が重要な決定ごとに合意を取らなければいけない運用が、子どもを巻き込んだ新たなトラブルを生むリスクも現実的だ。制度が始まったばかりで、家庭裁判所の対応能力や実務のルールが追いついていない部分もある。

法律が変わったことで、これから離婚を考える人の選択肢が増えたことは確かだ。何を選ぶのが自分と子どもにとって最善かは、法律の枠組みを理解したうえで弁護士に相談しながら判断する、という流れが現実的だと思っている。

それと、今回の改正で弁護士費用・裁判所の混雑という現実的な課題も浮上している。共同親権か単独親権かを家庭裁判所が決めるケースが増えれば、裁判所への申立件数も増える。日本の家庭裁判所はただでさえ人手不足が指摘されており、手続きに時間がかかるケースが出てくることは容易に想像できる。制度の理念と現場の処理能力が合っているかどうかは、今後の実績を見ながら評価が進んでいくだろう。

いずれにせよ、4月1日から日本の離婚制度は大きく変わった。自分に関係がある・なしにかかわらず、制度の基本を知っておくことは損ではないと思う。

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