日経平均2644円安の衝撃──NISAを「売るべきか」悩む前に知っておきたいこと

日本情報

2644円。この数字を見て、胃が痛くなった人は少なくないはずだ。

2025年4月7日(月)、日経平均株価は終値で前週末比2644円安の3万1136円を記録した。下落率は7.83%。取引時間中は一時2900円を超える下げ幅になり、大阪取引所では日経平均先物の売買を強制停止する「サーキットブレーカー」が発動された。2024年8月以来のことだった。

新NISAを始めたばかりの人、毎月コツコツ積み立てていた人、証券会社のアプリを開いて思わず閉じた人。SNSでは「NISAやめたい」「損した」「どうすればいい」という声が一気に広がった。

結論から言う。売らなくていい。やめなくていい。その理由を、数字と過去の事例で説明する。

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4月7日、いったい何が起きたのか

発端はアメリカだ。トランプ大統領は2025年4月2日、各国に対して「相互関税」を発動すると発表した。日本には24%の追加関税が課せられることになり、市場は即座に反応した。

さらに追い打ちをかけたのが中国の報復だ。4月4日、中国政府はアメリカからの全輸入品に34%の追加関税を課すと宣言した。米中の関税の応酬が世界経済を急速に冷やすという恐怖が市場を覆い、週明けの4月7日(月)に一気に売りが殺到した。

この日の東証プライム市場は、9割超の銘柄が下落する「全面安」だった。東京エレクトロンが一時13%安、トヨタ自動車が一時8%安。主要企業が軒並み大きく売られた。「トランプ関税ショック」と呼ばれるこの急落は、1日だけで終わらず、週をまたいで市場を揺さぶり続けた。

下落幅は歴代3位の記録

2644円という数字がどれほど大きいかは、歴史と比べるとよくわかる。

  • 1位:2024年8月5日 −4451円(日銀利上げ+米景気後退観測)
  • 2位:1987年10月20日 −3836円(ブラックマンデー翌日)
  • 3位:2025年4月7日 −2644円(トランプ関税ショック)

率にして7.83%。この数字を毎日の株価変動のサンプルで統計的に分析すると、「535万年に1度しか起きない」レベルの急落だという試算も出ている。大げさに聞こえるかもしれないが、それだけ異常な動きだったということだ。

SNSに溢れた声「NISAやめた」「どうしよう」

株価が崩れ落ちていく中、SNSのタイムラインも荒れた。X(旧Twitter)では「パニック売り」がトレンド入りし、「含み益が一瞬で消えた」「マジか」「NISAやめたい」という投稿が次々と流れてきた。

集英社オンラインの記事は、この状況を「えっぐ」「本当にヤバい」というSNSの言葉を引用しながら伝えていた。こうした反応は当然だと思う。特に2024年から新NISAを始めた初心者にとって、急落は「想定外」だったはずだから。

ただし、SNSで目立つのはパニックになった声ばかりで、「静かに積み立てを続けている人」の声は流れてこない。それが投資の難しいところでもある。

マジか。と思ったままでいいのか、ちゃんと考えてみる必要がある。

focus photography of ramen in bowl with condiment shakers

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過去の暴落と比べると、見えてくるものがある

今回の急落を「過去最悪」と感じている人も多いかもしれない。ただ、日経平均はこれまでも何度も似たような崩れ方をしてきた。

リーマンショック(2008年)

2008年9月のリーマン・ブラザーズ破綻を機に、日経平均は約半年で50%以上暴落した。底を打ったのは破綻から約5か月後、完全に元の水準に戻るまで実に4年8か月かかった。回復は長くて苦しかった。

コロナショック(2020年)

2020年2月から約2か月で日経平均は3割近く下落した。一時は1万6000円台まで落ちたが、その後の回復は驚くほど早く、約11か月で元の水準を超えた。コロナショックで狼狽売りをした人は、回復の恩恵を受けられなかった。

今回のトランプ関税ショック

3万1136円まで下落した後、日経平均は数週間で反発し始めた。野村證券は2025年末の日経平均を3万8000円と予測。アナリストの多くは「関税問題は交渉によって緩和される余地がある」と見ており、長期的な上昇トレンドが崩れたとは見ていない。

過去の事例が示すのは一つのことだ。「暴落後も持ち続けた人は、最終的に報われることが多い」。

NISA初心者が一番やってはいけないこと

急落したとき、多くの初心者が取る行動がある。「損失が広がる前に売ってしまおう」という判断だ。

これが一番まずい。理由は単純で、売った瞬間に損失が確定するからだ。そして、その後に株価が回復したとき、自分はすでにその恩恵を受けられる立場にいない。

NISAには非課税という強力なメリットがある。しかし売ってしまえば、そのメリットも消える。さらに、損失を確定させた分は非課税枠として復活しない(翌年以降の枠として復活するのみ)。

…いや、でも「損が広がるのが怖い」という気持ちは正直わかる。ただ、その恐怖に従って動くのが最も高くつくパターンなんだよね。

急落時にやってはいけないNG行動まとめ

  • ❌ 感情に任せてその日のうちに売却
  • ❌ 「もっと下がる前に」と積み立てを停止
  • ❌ SNSの「やばい」「損した」に引きずられる
  • ❌ 短期で元に戻ることを期待して逆張り一括購入

ドルコスト平均法とは何か:急落が「チャンス」になる理由

積み立てNISAで毎月一定額を投資している人は、実は今回の急落で密かに恩恵を受けている可能性がある。それが「ドルコスト平均法」の効果だ。

仕組みはシンプルだ。毎月1万円を積み立てているとして、価格が高いときは少ししか買えない。価格が低いときはたくさん買える。結果として、平均の購入単価が自然と平準化されていく。

具体例で説明する。

基準価額 購入口数(1万円分)
1月 1万円 1口
2月 5000円(急落) 2口
3月 8000円(回復中) 1.25口
合計 3万円投資 4.25口保有

3か月で3万円を投じて4.25口を保有。平均購入単価は約7059円になる。もし3月の価格が1万円に戻れば、資産は4万2500円に。3万円が4万2500円になる計算だ。

急落している2月にも黙って積み立てを続けたことで、安い価格でたくさん買えていた。これがドルコスト平均法の力だ。

暴落時に積み立てをやめると何が起きるか

コロナショックを例に、積み立てを続けた場合と2020年3月に停止した場合のシミュレーションが各証券会社から出ている。結果はほぼ共通している。続けた人の方が最終的な資産額が大きくなった。

暴落時が最も安く買えるタイミングで、そこで積み立てをやめてしまうと、最もお得なタイミングを逃すことになる。

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専門家は何と言っているか

今回の急落に際して、複数の証券会社や投資専門家がコメントを出した。共通して言われていたのは次のことだ。

「長期・積立・分散という原則は変わっていない」

三菱UFJ銀行のマネーキャンバスは「下落時に売却する必要はない。感情に任せた売却は損を確定させ、その後の回復を逃す」と説明している。楽天証券は「積み立てを続けることで、下落局面は結果的に『安く買えた期間』になる」と解説している。

SBI証券のレポートは、今回の急落について「関税問題という政策リスクが発端であり、企業の本質的な価値が毀損したわけではない」と分析した。つまり、株価が落ちた理由は「恐怖」と「不確実性」であって、日本企業の稼ぐ力が突然なくなったわけではないという見方だ。

それでも売りたいとき、どう考えるか

「生活費が足りなくなって本当にお金が必要」という場合は話が別だ。投資は生活に余裕のある資金でやるものであって、生活資金を投じてはいけない。

もしそういう状況なら、まず積み立て金額を減らすことを考える。それでも厳しければ一時停止。売却は最後の手段だ。

「なんとなく怖いから売りたい」という場合は、売らない方がいい。感情的な判断は統計的に見ても損な結果になりやすい。投資を始めた時の自分の「なぜ始めたのか」を思い出す時間を作った方がいい。

急落時の判断チェックリスト

  • ✅ 生活費は別口座にある(投資に回しているのは余裕資金)
  • ✅ 投資の目的は5年以上先の資産形成
  • ✅ 今売っても生活に困らないが、「怖い」だけで売ろうとしていない
  • ✅ 過去の暴落が回復してきた歴史を知っている

全部に当てはまるなら、売らなくていい。積み立てを続けるのが正解だ。

今後の見通し:アナリストはどう見ているか

野村證券は2025年末の日経平均株価予想を3万8000円に設定している(関税交渉の進展を前提とした想定)。ダイヤモンドZAIの分析では、「関税問題はあくまでも交渉の道具であり、最終的な関税率は発表値より下がる可能性がある」という見方が示されている。

もちろん、見通しは外れることもある。アナリストが「上がる」と言っても必ず上がるわけではない。ただ、過去の大暴落から一つ言えることがある。「5年単位で見た場合、株式市場は長期的に上昇してきた」という事実だ。

今の痛みは本物だ。でも、その痛みに耐えた人が最終的には報われるケースが多かった。それが歴史の示すことだ。

初心者が急落時にすべきことまとめ

長くなったので、最後にシンプルにまとめる。

  1. 証券アプリを閉じる──毎日見ると精神的にきつい。週1回で十分
  2. SNSの「やばい」に反応しない──騒いでいるのはパニック組だけ。静かに続けている人は書かない
  3. 積み立てを止めない──今が一番安く買えるタイミングかもしれない
  4. 売却は「生活費が本当に足りない」時だけ──怖いだけなら売らない
  5. 投資を始めた目的を思い出す──老後のため、10年後のため。今の相場は一時的なノイズかもしれない

2644円下がった。それは事実だ。でも、2020年のコロナショックで日経平均が30%近く落ちた後も、1年以内に元の水準に戻ったのも事実だ。

歴史は繰り返すとは限らない。でも、少なくとも今の時点では「静かに続けること」が最もシンプルで、最も報われてきた戦略だ。

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