NISAの画面、最近ちゃんと見てる?
2024年に新NISAが始まって、2年以上が経った。「とりあえず積立を設定して、そのままにしてある」という人が多いんじゃないかと思う。ほったらかし投資の考え方でいえば、それは正しい。でも、「一度も見ていない」「設定した理由もあまり覚えていない」という状態になっているとしたら、春のこのタイミングで一度だけ確認しておきたい。
特に今年はトランプ関税ショックで株価が大きく動いた。「このまま積み立てを続けていいのか」「銘柄を変えた方がいいのか」と気になっている人も多いはずだ。そのモヤモヤを、この記事で一度整理してみたい。
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まず今の状況を確認する──2026年春のNISAはこうなっている
新NISAは2024年スタート。つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)の合計で年間360万円、生涯上限1,800万円まで非課税で運用できる制度だ。
2026年4月時点の状況を見ると、オルカン(eMAXIS Slim全世界株式)の純資産総額は約10.3兆円と、投資信託トップクラスの規模になっている。つみたて投資枠利用者の約4割がオルカンを購入しているという調査もあり、「とりあえずオルカン」で始めた人が非常に多い。
一方で2026年に入ってから、トランプ関税ショックが直撃した。オルカンは2025年4月の暴落で一時-18.6%まで下落。S&P500連動型も年始比-13%超の局面があった。「こんなに下がるとは思わなかった」という声も多かった。
ただ、長期積立という観点で言えば、これは想定の範囲内だ。過去のデータを振り返ると、世界株式インデックスは長期では右肩上がりを続けてきた。10〜20年単位で見れば、今の下落は「途中の揺れ」に過ぎない可能性が高い。短期的な動きに一喜一憂するよりも、設定した積立を粛々と続けることが、結果的に有利になることが多い。
暴落時にやってはいけないことと、やるべきこと
まず結論から言う。積立投資をしている人が暴落時にやってはいけないのは、「慌てて売ること」と「積立を止めること」の2つだ。
なぜか。株価が下がった局面では、同じ積立金額でより多くの口数を買えるからだ。毎月3万円を積み立てていて、基準価額が10,000円から8,000円に下がれば、同じ3万円で買える口数が増える。長期で見れば、この「安く買えた期間」が将来の利益の源泉になる。
リーマンショック(2008年)やコロナショック(2020年)でも、積立を止めなかった人は回復後に大きなリターンを得た。これは歴史が証明している。もし今「もう積立をやめようかな」と思っているなら、それは一番避けたい行動だ。
…とはいえ、画面を見て「マイナス○万円」という数字が出ていると、頭でわかっていても胸が痛いのは事実だ。そういう気持ちは間違っていない。だからこそ、暴落時は「なるべく見ない」という戦略もある。
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銘柄を見直すべきか──オルカンとS&P500の整理
「オルカンからS&P500に変えた方がいいか」「逆にS&P500からオルカンに変えるべきか」という議論は常に出てくる。結論を先に言えば、どちらも長期積立で持ち続けるなら、今すぐ変える必要はないというのが多くの専門家の見解だ。
ただし、信託報酬(運用コスト)には注目してほしい。0.2%以上差があるなら銘柄変更を検討する価値があるが、現在の主要インデックスファンドはどれも0.1%前後まで下がってきており、差は縮まっている。
2026年のトレンドとして注目されているのは、オルカン・S&P500一択から少し分散する動きだ。日経平均高配当株50インデックスや、ゴールドETFを成長投資枠で組み合わせる人が増えてきた。「全部を米国株に集中させることへの不安」が、トランプ関税ショックで高まったことが背景にある。とはいえ、初心者がいきなり複雑にする必要はない。まずはシンプルな積立を続けることの方が大切だ。
つみたて投資枠と成長投資枠、どう使い分けるか
新NISAの2枠の使い方を整理しておく。
つみたて投資枠(年間120万円)は、金融庁が厳選した低コストの投資信託のみ積立購入できる枠。初心者は基本的にここにオルカンかS&P500を積み立てておけばOKだ。
成長投資枠(年間240万円)は、個別株・ETF・REITも対応し、一括購入もできる。「余裕資金で個別株を試したい」「高配当株で配当収入を作りたい」という人が使う枠だ。初心者がいきなり成長投資枠で個別株を買うのはリスクが高く、最初はつみたて投資枠だけで十分というケースが多い。
節税効果の数字も押さえておく。毎月5万円を30年間、年利3%で運用した場合、課税口座では運用益の20.315%が税金で引かれる。NISAなら0円。その差は226万円以上になる。長期で見るほど、非課税の恩恵は大きい。
また、NISAで一度売却しても、翌年以降は枠が復活する(非課税保有限度額1,800万円の範囲内で)。「売ったら枠が消える」という誤解が多いが、正確には「売った分の枠は翌年に戻る」という設計だ。これを知っていると、資金が必要になったときに売りやすくなる。
積立額は変えるべきか──無理のない設定が一番大事
「もっと積み立て額を増やした方がいいか」とよく聞かれる。答えは「生活防衛資金を確保した上で、無理のない金額が正解」だ。
初心者がよくやる失敗の一つが、生活防衛資金(生活費6ヶ月〜1年分)を残さずに投資してしまうことだ。急な出費や収入減のとき、やむなく損切りして売却しなければならなくなる。NISAは長期保有が前提なので、途中で売らなくて済む金額を積み立てるのが原則だ。
月3万円積み立て続けることができれば、25年後には年利3%の想定で約1,471万円になる(節税効果97.9万円)。「もっと積まなきゃ」と焦る必要はない。続けることの方が、金額を増やすことよりも重要だ。
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今すぐ確認すること──3つだけ
難しく考えなくていい。今すぐやるべきことは3つだけだ。
1. 積立が止まっていないか確認する。クレジットカード変更や口座変更のタイミングで、自動積立が止まっていることがある。「設定したはず」でも、一度確認しておきたい。
2. 信託報酬が0.2%以上高い銘柄を積み立てていないか見る。数年前に設定したまま、今より手数料の高いファンドで積み立て続けているケースがある。同じ指数ならより安いファンドに乗り換えるのはアリだ。
3. 暴落を見て売っていないか、または積立を止めていないか確認する。もし止めていたなら、今すぐ再開する。止めた期間の分は取り返せない。
それだけでいい。NISAは「管理するもの」ではなく「続けるもの」だ。春の確認を一度だけやったら、あとはまたほったらかしで構わない。
よくある失敗パターン──知っておくだけで防げる
最後に、初心者がよくやってしまう失敗をまとめておく。これを知っておくだけで大半は防げる。
一番多いのは「損益通算できないことを知らなかった」という失敗だ。NISA口座で利益が出ても、特定口座の損失と相殺することができない。NISAの利益を「損のカバー」に使おうとしても使えない、という仕組みを理解せずに運用している人が多い。
次に多いのが「生活防衛資金まで投資してしまう」ケース。生活費の6ヶ月〜1年分程度は現金で残しておかないと、急な出費のときに損切り売却を強いられる。NISAの売却は翌年に枠が復活するとはいえ、損した状態で売るのは非常にもったいない。「余裕資金だけで投資する」という原則は守り続けてほしい。
あとは「他人の推奨銘柄に安易に乗る」こと。SNSで「この銘柄が熱い」と話題になっているものに飛びついて、よく理解しないまま買ってしまうのは危険だ。長期積立の基本は、自分が理解できるシンプルな商品を選ぶことにある。
NISAは「始めたら続けるだけ」という制度だ。一度設定すれば、基本的には放置でいい。ただ、年に1〜2回だけ画面を開いて積立が動いているかを確認する習慣を持っておくと、余計なトラブルを防げる。この春がそのタイミングだ。
新NISAが始まって2年以上経ったいま、「やってる人」と「まだやっていない人」の差は、少しずつ広がり始めている。始めていない人は、まず月3,000円からでもいいので、今月中に口座開設と積立設定だけ終わらせてほしい。「いつか始めよう」は、気づいたら何年も経っている。


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