日経平均が史上初の6万円突破──なぜ今ここまで上がったのか、NISA民はどうすべきかを整理する

日本生活

株価が上がっている。でも、僕の財布は軽い。

この二文を並べたとき、違和感を覚えない人は少ないと思う。ニュースを開けば「日経平均が最高値更新」「6万円突破目前」という文字が並んでいる。なのに、スーパーに行けば卵は以前より高い。電気代の明細は去年よりも重い。ランチを食べようとしたら千円を超えていた。

何かがおかしい。

2026年4月23日の朝、東京市場が開いた直後から日経平均は急伸した。午前の取引時間中、ついに史上初めて60,000円の大台を一時突破した。バブル期の最高値38,915円(1989年12月)から、わずか37年越しにして「新次元」の株価水準に到達した瞬間だった。

すごいのか。

すごいんだろう。でも、正直なところ、ピンとこない。だから今日は、この「ピンとこなさ」を丁寧にほぐしていく。なぜ6万円まで上がったのか、なのに生活はなぜ苦しいのか、そしてNISAをやっている僕らはこの局面でどう動けばいいのか。

Stock market chart shows a downward trend.

Photo by Arturo Añez on Unsplash

日経平均が史上初の6万円突破──4月23日、東京市場で何が起きたのか

4月23日、午前9時を過ぎた頃、東京証券取引所の画面には見慣れない数字が並んでいた。日経平均株価(日経225)が60,000円を一時超えたのだ。前日4月22日の終値は59,585円。最高値を更新し続けていた流れのなかで、ついに大台を突き抜けた。

日経平均の歴史を振り返ると、この数字の意味がよりはっきりする。

  • 1989年12月末:38,915円(バブル期の史上最高値)
  • 2024年:4万円台突破(バブル超えとして大騒ぎになった)
  • 2025年:5万円台突破
  • 2026年4月23日:6万円突破

たった2年で、日経平均は2万円以上も上がったことになる。バブル崩壊後に30年以上停滞し続けていた日本株が、ここ数年で異次元の上昇を見せているのだ。

でも、なぜ今なのか。この急上昇には、明確な理由がある。

なぜ株価は6万円まで上がったのか──AI・中東・円安の三重奏

株価が上がる理由は、いつも複数の要因が絡み合っている。今回の6万円突破も、単一の出来事が引き金を引いたわけではない。大きく分けると「AI・半導体」「中東情勢の安定」「円安」の三つが重なって、株価を押し上げた。

ソフトバンクとAI株が引っ張る「AI相場」の実態

今の相場を牽引しているのは、AI関連銘柄だ。特にソフトバンクグループ(SBG)の動きが大きい。OpenAIやArmへの投資が評価され、株価は急伸している。アメリカではエヌビディアが好決算を続け、TSMC(台湾積体電路製造)も力強い業績を発表した。この波が日本株にも直接波及した。

国内では東京エレクトロンやディスコといった半導体製造装置メーカーが軒並み高値を更新している。「AI需要があれば、半導体が必要。半導体があれば、製造装置が必要」という連鎖構造だ。AI(人工知能)は一種のブームではなく、インフラとして定着しつつある。だから株価の上昇にも持続性が出てきている、と市場は判断している。

…いや、これはちょっと単純化しすぎかもしれないが、少なくとも今の「AI相場」がバブル期とは性質が違うという見方は主流になってきた。

もう一つの要因が、中東情勢の落ち着きだ。4月17日にレバノン・イスラエル間の停戦合意が報じられ、それまで「有事のリスクオフ」で様子見をしていた投資マネーが一気に株式市場に戻ってきた。原油価格も安定し、エネルギーコストへの不安が後退した。これが株高の後押しになった。

円安159円が輸出企業の株価を押し上げるメカニズム

もう一つ、見逃せないのが為替だ。4月23日時点で、ドル円は159円台。円安が続いている。

円安がなぜ株高につながるのか。シンプルに言えば、「海外で稼いだお金が、円換算で増える」からだ。トヨタがアメリカで100万ドル分の車を売った場合、1ドル=120円なら1億2000万円だが、1ドル=159円なら1億5900万円になる。売上も利益も、円換算では膨らむ。トヨタ、ソニー、キヤノンといった大手輸出企業にとって、円安は業績の追い風になる。

投資家はそれを見越して、輸出企業の株を買う。だから円安が続くと、日経平均も上がりやすくなる、という構造だ。

a bunch of coins sitting on top of a table

Photo by Possessed Photography on Unsplash

「株高なのに生活が苦しい」のはなぜか──日経平均と家計のズレを解説

ここが、この記事で一番伝えたかったことだ。

日経平均が6万円になっても、スーパーの食品は値下がりしない。電気代も下がらない。給料がドーンと増えるわけでもない。なぜか。

日経平均(日経225)とは、東京証券取引所プライム市場に上場している代表的な225社の株価を加重平均して算出した数字だ。大企業の「株の値段」の平均であり、日本経済全体の体温計ではない。日本に存在する企業の数は400万社以上だが、日経平均に含まれるのはそのうちの225社だけだ。

株高の恩恵を受けるのは、主に株を持っている人だ。NISA口座は現在4,000万口座以上あるといわれるが、日本の成人人口が約1億人であることを考えると、株を持っていない人のほうがまだ多い。株高が資産を増やしてくれるのは、その「持っている側」の話であって、持っていない側の生活実感とは切り離されている。

物価高は別の話だ。食品、電気代、外食費。2026年に入っても値上げは続いており、実質賃金(物価上昇を差し引いた実際の購買力)はまだマイナス圏で推移している期間が長かった。株価は上がっている。でも、財布の中身は軽い。この二つは矛盾しているように見えて、実はそれぞれ別の世界の話をしているのだ。

「株高と物価高の同時進行」。これが2026年の日本の特徴だ。

NISA民はどうすべきか──高値圏での積立継続・利確判断を整理する

日経平均が6万円を超えたとき、NISA口座を持っている人の多くが感じる疑問は同じだと思う。「こんな高値で買い続けていいのか」「今のうちに売って利益を確定した方がいいのか」。

これはポジションによって答えが変わる。整理してみる。

積立NISAはそのまま続けていい?ドルコスト平均法の考え方

毎月一定額を積み立てている人、つまり「つみたてNISA勢」や「新NISA成長投資枠でオルカン・S&P500を積立設定している人」は、基本的にそのまま続けていい。

理由は「ドルコスト平均法」にある。ドルコスト平均法とは、毎月同じ金額を定期的に買い続けることで、高いときには少なく、安いときには多く買える仕組みのことだ。結果として、購入単価が平準化される。今月6万円の高値でも100円分買う。来月5万円に下がれば120円分買える。長期で続けることで、このムラが均される。

「高値だから止める」という判断は、実はドルコスト平均法の効果を自分で壊すことになる。止めるタイミングと再開するタイミングを両方正確に当てることは、プロでも難しい。だから積立勢は「何もしない」が正解に近い。

僕自身、NISAを始めたのは2023年の秋だった。「なんとなく老後が不安で」と思ってオルカン(全世界株式インデックス)を毎月5万円積み立て始めた。最初は毎日口座を見ていたけど、今はほとんど見ない。見ても、何もできないし、する必要がない。そのくらいの距離感が、積立には合っていると感じている。

一括投資勢は利確を考えるべき局面か

一方、一括で大きな金額を投資していた人は話が少し変わる。例えば「2024年に500万円を一括でS&P500に入れた」という場合、今の高値圏では含み益が相当ある可能性が高い。

この場合、利益確定(利確)は選択肢としてありうる。ただし、NISAの利点は非課税であること。通常、株で利益が出ると20.315%の税金がかかるが、NISA口座内であれば非課税だ。つまり、「利確して再投資」を繰り返せるのもNISAの強みだが、利確した分の枠は戻ってこない点に注意が必要だ(年間投資枠の消費)。

一括投資勢は、「この利益をいつ使うか」を考えて動くべきだろう。10年以上使わないお金なら、高値でも持ち続けるのが長期投資の原則だ。3〜5年以内に使う予定があるなら、一部利確も現実的な選択肢になる。

Bicycle parked outside a japanese restaurant at night.

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バブル最高値からの歴史──38,915円から6万円まで、日本株は何が変わったか

1989年12月29日。日経平均は38,915円という史上最高値をつけた。その後、日本はバブル崩壊とともに長い低迷期に入り、2009年には7,000円台まで下がった。あの頃の「日本株はもうダメだ」という空気は、経済ニュースを見ていた人なら覚えているかもしれない。

それが今、6万円だ。

何が変わったのか。大きく言えば二つある。一つは「企業の体質改善」だ。東証が上場企業に対してROE(自己資本利益率)の改善や株主還元の強化を求め、多くの企業がこれに応じて配当や自社株買いを積極的に行うようになった。企業が「稼いで、株主に返す」体質になってきた。

もう一つは「外国人投資家の見直し」だ。日本株は長らく外国人投資家に「安い」と見られていた。割安で、改善の余地がある。そこにAIブームと円安が重なって、「今が買い時」という判断が一気に集まった。ウォーレン・バフェット氏が日本の商社株を大規模に購入したことが象徴的で、「バフェットが買う日本株」というイメージが世界的に広まったのも大きかった。

バブル期の38,915円は「実態のない株高」と言われた。土地や株への投機が積み重なった幻だった。今回の6万円が同じ構造かどうか、判断は難しいが、少なくとも企業の実力(利益水準)がバブル期とは比べ物にならないほど向上していることは事実だ。

今後の日経平均はどこへ──専門家の年末予測と「AI相場」の持続性

6万円突破を受けて、証券会社や投資銀行の年末予測が相次いで更新されている。強気シナリオでは6.5〜7万円台、調整シナリオでは5.5万円台という数字が並んでいる。幅が広い。要するに、誰にもわからない。

気をつけたいのは「AI一点集中リスク」だ。今の相場はAI・半導体という少数のテーマに資金が集中している。ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、ディスコなど、特定の銘柄が日経平均を引っ張っている構造だ。これらの銘柄が調整に入ると、日経平均全体も大きく下落する可能性がある。

個別銘柄への集中投資をしている人は、このリスクを意識しておく必要がある。一方でオルカンやS&P500のような広く分散されたインデックスファンドを積み立てている人は、一つのテーマへの依存度が低いため、相対的にリスクが管理されている。

相場の先行きは、AI関連企業の決算が出そろう4〜6月が一つの節目になりそうだ。エヌビディアやソフトバンクの業績が市場の期待を上回り続けるかどうか。ここが今後の「AI相場」の持続性を測るバロメーターになる。

高値圏で株を買うのは怖い。それは正直な感覚だし、間違っていない。ただ、長期積立というのは「今が高いかどうか」ではなく「10年後もこの企業・経済が成長しているか」に賭けるものだ。その前提が崩れない限り、日々の株価の上げ下げに一喜一憂する必要はない、と個人的には思っている。

よくある質問(FAQ)

Q: 日経平均6万円はいつ突破した?

A: 2026年4月23日の東京市場・取引時間中に史上初めて6万円を一時突破した。前日4月22日の終値は59,585円で、この日も最高値を更新していた。バブル期の最高値38,915円(1989年12月)を大幅に上回り、日本株は新次元の水準に達した。

Q: 日経平均が上がっても生活が良くならない理由は?

A: 日経平均は大企業225社の株価の平均であり、一般の給与や物価とは直接連動していない。恩恵を受けるのは主に株を保有している人に限られる。一方で食品や光熱費などの物価高は続いており、実質賃金がまだ低い水準にある2026年の日本では、「株高と生活苦の同時進行」という状態が続いている。

Q: NISA積立を高値でも続けるべきか?

A: 積立NISA・新NISAでインデックスファンドを毎月定額積立している人は、高値でも続けるのが原則だ。「ドルコスト平均法」の効果で購入単価が平準化されるため、高値での停止はかえって機会損失につながりやすい。10年以上の長期視点で積み立てているなら、目先の株価に左右されず継続する判断が合理的だ。

Q: 日経平均の今後の見通しは?

A: 証券会社・投資銀行の年末予測は強気シナリオで6.5〜7万円台、調整シナリオで5.5万円前後と幅がある。AI・半導体関連企業の決算内容と、円安・中東情勢の動向が鍵を握る。AI関連銘柄への資金集中が続いている点は「一点集中リスク」として注意が必要で、調整局面では大きく下落する可能性もある。

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