最近、会社を辞めた・フリーランスになった・独立したあなた、国保の保険料通知、来た?
もし「まだ届いていない」なら、今のうちに読んでおいてほしい。届いてから慌てるより、事前に仕組みを知っていた方が絶対にいい。
そして「もう届いた」人も、この金額の計算方法を理解しているかどうかで、来年の動き方がかなり変わってくる。
僕が会社を辞めたのは去年の11月だった。退職後しばらくは年金事務所やハローワークの手続きに追われて、国保のことは後回しにしていた。2026年1月、市区町村から保険料の通知が届いて、そこに書かれた金額を見て声が出なかった。月額にして約38,000円。会社員のとき天引きされていた健康保険料は月14,000円台だったから、ほぼ倍以上だ。
高すぎる。
でも、計算式を追ってみたら「そりゃそうなるよな」という理由があった。怒りは半分残ったけれど、仕組みを理解してからは「じゃあ来年どうすれば減らせるか」を考えられるようになった。
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国民健康保険料の計算方法2026年版──所得割・均等割・平等割の仕組みをわかりやすく解説
国民健康保険料(以下、国保料)は、大きく分けて「所得割」と「均等割」の2つで構成されている。自治体によっては「平等割(世帯割)」が加わる場合もある。
まず所得割。これは前年の所得に応じて計算される部分だ。
計算式はこうなる。
所得割額 = (前年の総所得金額 − 基礎控除43万円)× 所得割率
所得割率は自治体によって違う。たとえば東京都練馬区の場合、医療分が7.38%、支援分が2.45%で、合計すると約9.83%程度になる。介護分(40〜64歳の場合のみ)を含めるとさらに上乗せされる。
次に均等割。これは加入者数に応じてかかる費用だ。収入がゼロでもかかる部分なので、家族が多いほど金額が増える。
均等割額 = 均等割単価 × 被保険者数
均等割単価も自治体によって異なる。東京都練馬区の場合、医療分は1人あたり年間約43,000円前後が目安だ。
合算すると、
国保料(医療分) = 所得割額 + 均等割額
これが1人世帯の場合の基本的な医療分の計算式だ。
3つの「分」──医療分・支援金分・介護分の内訳
国保料は1本の費用ではなく、3つの「分」に分かれている。
ひとつ目は「医療分」。医療費をカバーするための主要な部分だ。全被保険者が対象となる。
ふたつ目は「後期高齢者支援金分(支援分)」。75歳以上の後期高齢者医療制度を支えるための分担金だ。全被保険者が対象で、医療分の計算と同様の仕組みで別途加算される。
みっつ目は「介護分」。介護保険料に相当する部分で、40歳以上64歳以下の被保険者のみが対象になる。39歳以下の人や65歳以上の人は介護分の対象外だ。
この3つを合計したものが国保料の総額になる。よく「計算が複雑でよくわからない」と言われるのは、この3本立ての構造のせいだ。一つひとつ分解すれば、それほど難しくない。
計算の具体例──年収400万円・単身・練馬区在住のケース
実際に数字を入れてみる。前年の給与収入400万円・独身・40歳未満・東京都練馬区在住のケースで試算する。
前年の給与収入400万円の場合、給与所得(収入から給与所得控除を引いた額)は約276万円が目安になる。
- 所得割の計算:(276万円 − 43万円)× (7.38% + 2.45%)= 233万円 × 9.83% = 約229,000円
- 均等割(医療分+支援分、1人の場合の目安):約55,000円前後
- 合計年間保険料の目安:約284,000円
- 月額換算:約23,700円
これは練馬区の概算で、実際には自治体ごとに料率が異なる。住んでいる市区町村の公式サイトに計算ツールが掲載されているケースが多いので、正確な金額はそちらで確認してほしい。
退職後の国民健康保険料はなぜこんなに高いのか──会社員時代との比較でわかる構造
「こんなに高いの?」と思うのは、会社員時代と比べるからだ。その感覚は正しい。実際に高くなっている。なぜか。
会社員が加入する健康保険(組合健保・協会けんぽなど)では、保険料を会社と従業員が半分ずつ負担する。たとえば総額で月30,000円の保険料がかかる場合、従業員の負担は15,000円で、残りの15,000円は会社が払ってくれている。
国保にはこの「会社の折半」がない。全額自己負担だ。
そうだったのか、と思う人も多い。「毎月の給与明細に書いてある健康保険料」は、本来の保険料の半分だったわけだ。残り半分は見えないところで会社が払っていた。それが退職すると全部自分の負担になる。
仮に会社員時代の健康保険料(本人負担分)が月15,000円だったとしても、総額は30,000円だ。退職後に国保で同程度の保障を受けようとすると、自分で30,000円払うことになる。倍に感じるのは当然で、実際に倍だ。
フリーランス・独立初年度に国保料が高い理由──「前年の会社員収入」がベースになるから
フリーランスや自営業に転向した初年度は、特に注意が必要だ。
国保料は「前年の所得」をベースに計算される。フリーランスになった初年度(たとえば2026年)の国保料は、2025年の収入で計算される。2025年に会社員として年収400万円を稼いでいた場合、2026年にフリーランスとして転向したとしても、2026年度の国保料は「年収400万円の会社員だった去年の所得」に基づいて計算される。
2026年のフリーランスとしての実際の収入がまだゼロでも、前年の所得が高ければ保険料は高くなる。
これが「独立初年度に国保料が高くて大変」という話の正体だ。翌年(2027年)の国保料は2026年の実際のフリーランス収入で計算されるので、そこからは実態に見合った保険料になっていく。初年度だけ特に辛い時期を過ごすことになる。
……いや、これはちょっと違うか。辛いというより、「資金計画に織り込んでおかないと予算が狂う」という話だ。独立の計画を立てる段階で、初年度の国保料を高めに見積もっておくことが重要だ。
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国民健康保険料の上限額2026年──医療分65万円・支援分24万円・介護分17万円、合計最高106万円
国保料には上限(賦課限度額)がある。所得がいくら高くても、一定額を超えて保険料がかかることはない。
2026年度の賦課限度額は以下の通りだ。
- 医療分:65万円
- 後期高齢者支援金分:24万円
- 介護分(40〜64歳のみ):17万円
- 合計最高額:106万円(介護分含む)または89万円(介護分なし)
年間106万円というのは月換算で約88,000円だ。相当な額に思えるかもしれないが、これが「天井」だ。高所得者にとっては実質的に保険料の上限として機能する。
逆に言うと、所得が非常に高くても106万円以上は請求されない。年収が1,000万円でも2,000万円でも、国保料の上限はこの額だ。
ただし、この上限は毎年見直される。近年は段階的に引き上げが続いており、2025年度の上限から2026年度にかけても改定がある。「去年より高くなった」という声はこのためだ。
上限に達する所得水準の目安
医療分の上限65万円に達するのは、おおよそ年間所得が700〜900万円を超える水準(自治体の所得割率によって異なる)だ。
「うちは所得がそんなに高くないから上限は関係ない」という人がほとんどだと思う。ただ、フリーランスや個人事業主で複数の収入源を持つ場合は、意外に上限に近づくケースもある。副業収入・不動産収入・株の利益なども合算されることを忘れないようにしたい。
国民健康保険料の軽減制度2026──7割・5割・2割軽減の条件と申請方法
国保には「所得が低い場合に均等割を軽減する」制度がある。申請不要で自動的に適用される仕組みだが、知らないと損することもある。
軽減の基準(2026年度)は以下の通りだ。世帯全員の所得を合算して判定する。
7割軽減:世帯の所得合計が43万円以下の場合
5割軽減:43万円 + (被保険者数 × 29万円)以下の場合
2割軽減:43万円 + (被保険者数 × 53.5万円)以下の場合
例を挙げると、単身世帯の場合:
- 7割軽減:所得43万円以下(給与収入約98万円以下の目安)
- 5割軽減:所得72万円以下(給与収入約137万円以下の目安)
- 2割軽減:所得96.5万円以下(給与収入約161万円以下の目安)
軽減されるのは「均等割額」の部分だ。所得割は別途計算される。
仮に均等割が年間50,000円の場合、7割軽減なら35,000円引かれて15,000円になる。5割軽減なら25,000円引かれて25,000円になる。2割軽減なら10,000円引かれて40,000円になる。
申請は基本的に不要だ。毎年6〜7月に市区町村が前年の確定申告・住民税申告のデータをもとに自動判定する。ただし、所得の申告を忘れると「所得不明」として軽減が適用されないケースがある。所得がゼロ(無収入)でも申告することが重要だ。
退職後の「所得急減」による軽減申請──特例的な制度も存在する
倒産・解雇・雇い止めなどで非自発的に離職した場合(いわゆる「特定受給資格者」「特定理由離職者」)は、前年所得の30%に相当する金額で所得割を計算する「非自発的離職者の特例軽減」が適用される自治体がある。
この特例は「自己都合退職」には原則適用されないが、自治体によって運用が異なる部分もある。雇い止めや会社都合退職の場合は、退職後に市区町村の窓口に相談することをすすめたい。
また、今年の収入が前年より大幅に減少した場合に減額申請ができる「申請減額制度」を設けている自治体もある。制度名や条件は自治体によって異なるため、住んでいる市区町村の国保担当窓口で確認してみてほしい。
任意継続保険と国民健康保険、退職後はどちらが安いのか──2026年版の比較と選び方
退職後の健康保険で、多くの人が迷うのがこの選択肢だ。
任意継続保険とは、退職後も最大2年間、在職中に加入していた健康保険(協会けんぽや組合健保)を継続して使える制度だ。退職後20日以内に申請する必要がある。
任意継続の保険料は「退職時の標準報酬月額」をベースに計算される。ただし、会社の折半がなくなるので全額自己負担になる。つまり、在職中の「本人負担額の2倍」が基本的な任意継続の保険料だ(ただし、標準報酬月額の上限が設定されているため、高所得者の場合は上限で頭打ちになる)。
協会けんぽの場合、任意継続の保険料の上限は月額約33,000円前後(2026年時点、都道府県によって料率が異なる)だ。
退職直後は、在職中の給与が高かった場合、任意継続の方が国保より安くなることが多い。なぜなら、国保料は前年の実際の所得をそのまま計算に使うが、任意継続は上限額で頭打ちになるからだ。
任意継続vs国保──どちらが安いかの判断基準
比較の仕方は単純だ。
退職後に国保の見積もりを市区町村の窓口(または自治体のウェブ計算ツール)で出す。任意継続の保険料は、退職前の会社の人事部門か健康保険組合に確認する。この2つを比べて安い方を選ぶ。
一般的な傾向として:
- 前年の給与所得が高い(500万円以上)→ 任意継続の方が安いケース多い
- 前年の給与所得が低い、または来年から大幅に所得が下がる見込み → 国保の方が安いケースも
- 扶養家族がいる場合 → 任意継続は家族も同じ保険料内でカバーできるが、国保は家族分の均等割が加算される
注意点がひとつある。任意継続は「途中でやめて国保に切り替える」ことができなかった。ところが、2022年1月の制度改正で「任意継続の保険料が国保より高くなった場合」に任意継続を途中で脱退できるようになった。この改正で、まず任意継続を選んでおいて、状況が変わったら国保に切り替えるという戦略も可能になった。
どちらが有利かはケースバイケースだ。面倒でも両方の金額を確認してから判断することを強くすすめる。
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国民健康保険料を合法的に下げる方法──収入コントロールと控除の活用
国保料を下げるための合法的な手段はいくつかある。
最も根本的な方法は「翌年の国保料計算のベースになる所得を下げること」だ。つまり今年の課税所得を下げることで、来年の国保料が減る。
フリーランス・自営業者の場合、経費をしっかり計上することが直接的な対策になる。仕事に使った費用は経費として計上できるが、申告していない人は思ったより多い。交通費、通信費、書籍・セミナー費用、事務用品代、自宅の一部を仕事場として使っている場合の家賃按分など、適切に経費計上することで所得を下げられる。
小規模企業共済への加入も有効だ。フリーランスや個人事業主が加入できる積み立て制度で、掛け金が全額所得控除になる。月7万円(年84万円)が上限で、掛け金分がそのまま課税所得から引かれるため、所得税・住民税・国保料の節減効果がある。
iDeCo(個人型確定拠出年金)の活用も同様の効果がある。掛け金が全額所得控除になり、課税所得を引き下げられる。国保料は前年の「課税所得」ではなく「総所得 − 43万円」がベースになるため、iDeCoや小規模企業共済の控除がどう影響するかは計算を要するが、所得自体を下げる効果はある。
青色申告特別控除の活用──フリーランスなら最大65万円を所得から差し引ける
個人事業主・フリーランスで青色申告をしていない人は、今すぐ税務署に届け出ることをすすめたい。
青色申告の最大のメリットは「青色申告特別控除」だ。正規の簿記の原則(複式簿記)で記帳してe-Taxで申告した場合、最大65万円を所得から控除できる。この65万円が課税所得から引かれることで、所得税・住民税が下がり、さらに国保料の計算ベースになる所得も下がる。
65万円の控除は年収400万円の人にとって、所得割率9%程度の自治体では国保料だけでも年間約6万円の差に相当する可能性がある。無視できない金額だ。
簿記の知識がなくても、会計ソフト(freee、マネーフォワード、弥生会計など)を使えば比較的簡単に複式簿記での記帳ができるようになった。年額1〜2万円程度のソフト費用で年間数万円の節約効果が見込めるなら、使わない手はない。
国民健康保険料の支払い方法と滞納のリスク──分割・口座振替・減免制度
国保料の支払い方法はいくつかある。
最もシンプルなのは、市区町村から送られてくる「納付書」での支払いだ。コンビニ払い、銀行窓口、一部の自治体ではスマートフォン決済にも対応している。
口座振替を設定しておくと、毎月自動で引き落とされる。払い忘れを防ぐためにも、口座振替への設定を強くすすめたい。
一時的に支払いが難しい場合は、市区町村の国保担当窓口に相談することが重要だ。滞納を放置すると延滞金が発生し、悪化すると「短期被保険者証」の発行や「資格証明書」への切り替えが行われる可能性がある。資格証明書になると、医療機関での支払いが全額自己負担になり(後で7〜9割が戻ってくるが)、受診のハードルが上がる。
分割払いの相談は多くの自治体で応じてもらえる。「払えないから放置」ではなく「払えないから相談する」という行動が、最終的に自分を守る。
退職直後で収入がない・著しく減少した場合は「減免申請」が可能な自治体も多い。前年の所得で計算された保険料が今年の実態と乖離している場合に、今年の見込み収入をもとに保険料を減額してもらえる制度だ。条件・申請期限は自治体ごとに異なるので、早めに窓口に相談することをすすめたい。
よくある質問(FAQ)
Q: 国民健康保険料の計算方法2026年をわかりやすく教えてください?
A: 基本の計算式は「(前年の総所得 − 基礎控除43万円)× 所得割率 + 均等割額(加入者数×単価)」です。医療分・後期高齢者支援金分・介護分(40〜64歳のみ)の3種類を合算した合計が年間保険料になります。所得割率と均等割単価は自治体によって異なるため、住んでいる市区町村の国保計算ツールで確認するのが正確です。
Q: 退職後に国民健康保険料が高いのはなぜですか?
A: 主な理由は2つです。1つは、会社員時代は会社が保険料の半分を負担していたのが、退職後は全額自己負担になるためです。2つ目は、国保料は前年の所得をもとに計算されるため、収入が高かった在職中の給与がベースになり、退職直後でも高い保険料が請求されるためです。翌年度からは実際の収入を反映した保険料になります。
Q: 国民健康保険料と任意継続保険、退職後はどちらが安いですか?
A: ケースバイケースです。前年の給与が高かった場合は任意継続の方が安いことが多く、前年の所得が低めだった場合や扶養家族がいない場合は国保の方が安くなることもあります。退職後に市区町村の窓口で国保料の試算をもらい、任意継続の保険料と比較してから判断することをすすめます。2022年以降、任意継続の途中脱退も可能になりました。
Q: 国民健康保険料の軽減制度(7割・5割・2割軽減)の条件は?
A: 均等割を軽減する制度で、世帯全員の所得合計が基準以下の場合に自動適用されます。7割軽減は世帯所得43万円以下、5割軽減は43万円+(被保険者数×29万円)以下、2割軽減は43万円+(被保険者数×53.5万円)以下が2026年度の基準です。申請不要ですが、所得の申告(確定申告や住民税申告)をしていないと適用されないため注意が必要です。
Q: 国民健康保険料2026年の年間上限額はいくらですか?
A: 2026年度の賦課限度額は、医療分65万円・後期高齢者支援金分24万円・介護分(40〜64歳のみ)17万円で、合計最高106万円(介護分含む)または89万円(介護分なし)です。所得がいくら高くてもこの上限を超えて請求されることはありません。


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